b型肝炎と逆転写酵素の関係

現代社会で猛威を振るっている感染症の一つとしてb型肝炎が挙げられます。b型肝炎は非常に複雑な感染のルートを取ることが知られており、生物学の研究によってそのメカニズムが明らかになってきています。そして感染する構造の一つに逆転写酵素というものが挙げられ、感染構造の中でも重要な位置を占めています。

では、逆転写酵素とはどのようなものなのでしょうか。

b型肝炎の感染の流れ

まず、逆転写酵素について考える前に感染の流れについて説明しましょう。b型肝炎はb型肝炎ウイルスというヘパドナウイルス科オルソヘパドナウイルス属に属するウイルスによって引き起こされます。体内へは血液を媒介して侵入しますが、感染経路には水平感染と垂直感染の二種類のルートが存在します。

垂直感染はいわゆる母子感染を指し、水平感染は主に傷口からの侵入など他者からの感染を指します。水平感染は4つのパターンが存在し、肌の接触によって生じる接触感染、くしゃみなどによって病原体が拡散することで生じる飛沫感染、空気中に漂う病原体によって発生する空気感染、汚染された物体によって生じる媒介物感染があります。

体内へb型肝炎ウイルスが侵入すると一定の確率で活動を始めます。b型肝炎の症状が出ない場合もありますが、もし症状が出ると危険な状態にまで悪化する可能性も考えられるため危険です。

実際に感染するまでの流れはこのようにさまざまなメカニズムの組み合わせによって構成されています。

逆転写の仕組み

ウイルスが体内に侵入した後活動するためにはウイルスの数を増やす必要があることが知られています。b型肝炎ウイルスはこのウイルスの増殖の際に特殊な行動をすることが研究によって明らかになっており、逆転写もその中の一つに数えられます。

逆転写は感染した宿主の遺伝子情報をコピーすることを指し、これがb型肝炎ウイルスの増殖に不可欠な部分を占めていることが明らかになってきました。では、逆転写のおおまかな流れを説明していきましょう。逆転写は、名前の通り転写の逆の動きをとることを指します。

転写とは生物を構成する細胞内の核の内側に存在する4つの物質によって情報が構成されているらせん構造の物質であるDNA、デオキシリボ核酸の情報を写し取ることでRNA、リボ核酸というたんぱく質などを合成するために必要な遺伝子情報を作ることをいいます。

一方で、逆転写はRNAの情報を写し取ることでDNAを作り出します。b型肝炎ウイルスは宿主である人間のRNA情報を読み取りDNAを作り出し、自身に取り込みます。ちなみに、この逆転写反応は世界的にも有名なエイズウイルスにも使われていますが、エイズウイルスはRNAウイルス、b型肝炎はDNAウイルスのため種類も異なればメカニズムも相違のある箇所が存在します。

さらには、遺伝子工学への応用もされている反応でもあります。

逆転写酵素とは

ここまで、感染の経緯と逆転写の仕組みを説明してきました。ところで、逆転写には逆転写酵素という特殊な物質が必要になってきます。まず、酵素について説明しましょう。酵素とはすなわち生体触媒のことを指します。触媒とはある化学反応に関与させることでその反応に必要なエネルギーを減少させ反応させやすくする物質です。

しかし、化学反応に関与はしますが実際に化学反応式に登場するような形で反応して変化するような物質ではありません。触媒がある場合と無い場合では反応にかかる時間が大幅に変わる場合があり、中には全く進まない化学反応を促進させる酵素も存在します。

つまり、生体触媒である酵素は体内で触媒の働きをする物質です。逆転写酵素は逆転写反応に対する酵素であり、この物質があることで逆転写反応が一気に促進されます。実際に逆転写の過程で反応が起こっている場所に逆転写酵素が配置され反応を手助けしていることが研究で明らかになっています。

逆転写酵素に目をつけた治療

今日ではb型肝炎ウイルスの増殖を抑制し治療をより良い方向へ持っていくために必要な治療薬が複数存在します。研究者たちは逆転写酵素が逆転写反応を起こすために無くてはならない物質であることに着目し、逆転写酵素の働きを阻害する治療薬を開発しました。ラミブジン、テノフォビル、アデフォビル、エンテカビルといった物質はこの効能があることがわかっています。逆転写酵素の効果を抑えることで逆転写反応が抑制され、結果としてb型肝炎ウイルスの繁殖を終えることができるのです。ウイルスの増殖を抑えることが出来ればより体内の免疫が機能しやすくなり、素早い治療へと向かうことが出来ます。科学の進歩によって治療の技術も相当向上しているということが出来るでしょう、

逆転写酵素を阻害する物質を用いた治療薬は複数存在しますが、使用する物質によって副作用や効能の程度も異なるため、治療の程度、かかる金額、副作用の大きさ等々様々な面を考えて選択する必要があるでしょう。

専門家である薬剤師や医師とよく相談して決定することでより安全で適切な治療を受けることが出来ると言えます。

核酸アナログ製剤の治療の流れ

核酸アナログ製剤は逆転写酵素を阻害する物質をふくむ治療薬で、前述の通りb型肝炎ウイルスの増殖を抑えるために使用されます。b型肝炎の症状には急性肝炎と慢性肝炎の二種類の症状が存在します。急性肝炎の治療はほとんどの特別な処置は必要なく、時間経過で治療します。

核酸アナログ製剤は慢性肝炎の患者、あるいは急性肝炎が極端に悪化してしまった患者の治療に使われることが多いです。状態によっては症状が劇的に改善することもあり、とても効力の強い治療法であることがうかがえることでしょう。

核酸アナログ製剤の服用を治療中に中断してしまうとすぐにb型肝炎の症状が悪化してしまうために、担当している医者から許可が下りるまでは服用を続けることが望ましいでしょう。

場合によっては急激に肝炎が進行してしまい大変なことになってしまう可能性もあり、極端に肝炎が進行してしまうと最悪の場合肝不全を引き起こしてしまう可能性もあります。ところで近年、核酸アナログ製剤に対して耐性を持っているウイルスが確認されています。

こうした場合、違う種類の核酸アナログ製剤を服用することで効果が発揮される場合があります。

どのように治療していくべきかは薬剤師の方や医者の方としっかり相談して決めると良いでしょう。